incognito_20th

インコグニートの通算20作目に当たるニュー・アルバム。もう安定も安定、近年のどのアルバムを聴いても、シッカリしたインコグニート節を披露していて、まったく危なげない。その分、衝撃や驚きはナイんだけれど…。でも楽しみなのは、今度は何を引っ張ってくるかなぁー?、というカヴァー楽曲。この新作では、とりわけそこに納得とビックリがありました。

まずスタート早々2曲目に飛び出すのが、ロイ・エアーズ<Running Away>。ユビクティの77年作『LIFELINE』からの人気曲で、ロイとエドウィン・バードソングの共作。おそらく、このアルバムの制作中にロイが亡くなったため、そのトリビュートの意図なのだろう。インコグニートでロイといえば、彼のクラシックである<Everybody Loves Sunshine>のカヴァーがあるけど、コレもなかなか。ヴォーカルはお馴染みのトニー・モムレムと、最近復帰してきたジョイ・ローズ。ヴァイブは、我が Light Mellow Serachesでソロ・アルバムを紹介しているマックス・ビーズリーなのも嬉しい。

そしてもう1曲が、超ビックリのスパッツ<(Your Lovin' Is) Everywhere>のチョイス。レア・グルーヴの隠れ名曲発掘はブルーイの得意なトコロだけど、まさかこのT.K.サウンドのマイアミ産ブルー・アイド・ソウルに目をつけるとは。こんなのCD化しているのは、日本ぐらいなんだけどな。ヴォーカルはこれもトニー・モムレム。彼の十八番であるスティーヴィー・ワンダー・スタイルが堪能できます。

その他、今回の特徴としては、最近インコグニートから離れ気味だったかつてのラインナップが復帰していること。ギターのフランシスコ・アレスとか、トラックメイクのサイモン・グレイとか。近頃は看板シンガーだったメイザ・リークの参加も断続的であるようだし。そうかと思うと、直近の来日公演にも同行していたという巨漢シンガー:ゼビュロン・エリスのアルバム初参加があったり。この辺りのブルーイの手管は、サスガ分かっているとしか言いようがない。

個人的にオォッ!と思ったのは、インストの<Zahra Smiles>。リズム隊のシンコペーション・リフレインと舞い立つようなオーケストレーションが絡み合って、マジカルな一瞬を演出する。歌モノのつもりが制作追いつかずだったのでは?、なんて指摘もあるけど、当初のアイディアはともかく、サイモン・ヘイルの弦アレンジがあまりに素晴らしいので、それをメインに聴かせるトラックにしちゃったのだと思うな。

聞けば、ブルーイもパーキンソン病を患っているそうで、ギターの演奏とか、ままならなくなってきているという。進行が遅い病気だから、直ぐにどうこうはナイだろうけど、貴重なセンスの持ち主なのだから、少しでも長く頑張って欲しいものよ…。






ゼウス [監修・解説:金澤寿和(Light Mellow)]
マックス・ビーズリーズ・ハイ・ヴァイブズ
Pヴァイン・レコード
2023-09-15