hiroshi_fission

去年、アナログ盤で復刻されて驚いたアルバムのひとつ。セッション・ギタリスト:安川宙志が、HIROSHI名義で84年にオーストラリアでリリースしたアルバム『核分裂(FISSION)』。今だからシティポップ系という冠で再発されたけれど、実際はポップス的要素は乏しく、大半を占める英語曲はAOR寄り。バラードや日本語曲はニューミュージックに寄っていく。それを包括的にまあるく包んでいるのが、彼のルーツであるジャズ・フュージョン的エッセンスだろうか。

安川は大阪出身で早くから頭角を現し、大学卒業後は関西圏でジャズ・トリオを組むなどして活動。上京後は世良譲トリオのメンバーとして、人気TV番組『11PM』にレギュラー出演していた。その後はスタジオ・セッションにシフトし、歌謡曲の歌伴やCM音楽制作でも活躍。数万曲のレコーディングやライヴ・サポートに貢献したとされる。再発盤のオビに書かれた稲垣次郎とソウル・メディア『FUNKY STUFF』、濱田金吾『midnight cruisin'』、しばたはつみ『ライヴ/エンタテインメント・スペシャル』は、そのホンの一部。また東京音楽祭や世界歌謡祭を長年サポート、ヤマハ音楽振興会が立ち上げたネム音楽院では講師を務めた。後にDEWを組む倉田信雄(kyd / さだまさし、美空ひばり、中島みゆき、山下達郎、椎名林檎、MISIA 等など)とは、ネムの師弟関係。彼をセッション活動に導いたのも安川だったという。

その安川がどうしてオーストラリアでアルバムを出すことになったのか、その経緯は不明だ。最初の作品は、79年に女性セッション・シンガーと出したHiroshi & Claudia『SIX TO SIX』だったらしく、シドニーとオーストラリアでレコーディングされている。内容はスピリチュアル要素の高いジャズ・ファンクで、Claudiaのヴォーカルはスキャット・オンリー。これがレア・グルーヴ・シーンで発掘され、7〜8年前に海外でアナログ・リイシューされた。続いて80年には、ハーモニカ奏者:八木のぶおとのプロジェクト:Hiroshi & Yagi 名義で1枚。この2枚に参加したのが倉田で、DEWも、最近再評価が進んでいる八木の79年のソロ作『MI MI AFRICA』も、こうした動きの一環だったらしい。ネムの師弟関係から生まれたユニットというと、デビュー直後の松田聖子のアレンジャー:信田かずおと、彼の教え子:松下誠が組んだミルキー・ウェイが再評価されているけれど、安川と倉田のDEWも、もっと注目されて良い。その後84年に、安川が単身オーストラリアへ渡って制作したのが、この『核分裂(FISSION)』になる。

この『核分裂(FISSION)』というレア・アルバム、DJやマニアが集まるクラブ・シーンではそこそこ注目されていたのかもしれない。でも自分的には、何だか唐突にアナログ再発された印象。ギターが本職だからヴォーカルはナニだけど、歌声がソフトで独特な雰囲気がある。俗にいう ヘタウマ というヤツ。タイトルとジャケの関係も意味不明だけど、松下誠『FIRST LIGHT』あたりにヤラレちゃってる聴き手なら、チェックしてみる価値があるはずだ。ちなみにご本人は、しばらくしてIT企業を立ち上げ、ネット関連の仕事を手掛けているらしいデス。

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