bernie labarge

83年にカナダCBSから出ていたバーニー・ラバージの唯一作『BARGING IN』のデラックス・エディションが、ようやく到着。まずはOZ発の輸入盤が出回り始め、今月中旬には拙ライナーが付いた輸入盤国内仕様が出る予定だ。80'sのロック系AOR、もしくは産業〜商業ロック好きの間では、それなりに知られていたヒトだけれど、国内盤が出ていたワケじゃないので、知名度は低い。なのでまずはココでご紹介を。

バーニー・ラバージは、1953年、カナダのオタワ生まれバーリントン育ち。エド・サリヴァン・ショーでビートルズを観て衝撃を受け、ジョージ・ハリスンに憧れてギターを弾き始めた。70年代に入って数多くのバンドでギター&&ヴォーカルを担当したが、フロントマンであっても人気取りに興味はなく、ライヴ・セッションやスタジオ・ワークなど裏方志向だったという。

その頃サポートしたのが、大ベテランのブルース・シンガー:ロング・ジョン・ボルドリーや、シンガー・ソングライターのクリストファー・ワードなど。その後カナダのAORバンド:チャイナ(クリストファー・キーニー在籍の3人組)に絡んで、彼らが頻繁に出演していたトロントのエル・モカンボ・クラブを中心にライヴ・サポートをしていたようだ。一時はバーニーも正式メンバーになる話があったそうで、“チャイナ”と命名される以前は、4人のファミリー・ネームの連名で出演していたらしい。現にチャイナのワン&オンリー作『CHINA(夜明けのダンサー)』(82年)には、ジェイ・グレイドンにジェフ・バクスター、リー・リトナー、アルバート・リーという名手たちと共に、バーニーの名がクレジットされている。もちろん当時は完全に謎のギタリストだったが。

またバーニーは、後に大物プロデューサーとなるダニエル・ラノワやその兄弟とも近く、地元企業のジングルやTV番組のテーマを一緒に制作していたそう。自身の初ソロ・シングルもラノアが手掛けたもので、それがボーナス・ディスクに収録された〈Dream Away〉。ちょっとプレイヤー〈Baby Come Back〉に通じる好曲で、そこそこローカル・ヒットしたようだ。しかも、解説執筆後に届いたクレジットを見たら、ドラムがかのジム・ヴァランス(ブライアン・アダムスのプロデューサー)でないの。なので彼の周囲には、いろいろ成功のタネが転がっていたと思われる。でもバーニー自身は、その後も黙々とセッション・ワークを続けていった。

かくして生まれたのが、本作『BARGING IN』である。全曲バーニー自身のオリジナルで、トロントにあるフェイズ・ワン・スタジオで録音。プロデュースもココのオーナー:ポール・グロスだ。彼はルパート・ハインと組む前のサーガ、78年からの初期3作を手掛けた人物でもある。バックは地元セッション・ミュージシャンらしく有名どころは不在ながら、キーボードを弾くルー・ポマンティは、近年はマーク・ジョーダンやマット・ダスクとの繋がりを持つジャズ系ピアノ・プレイヤー/アレンジャーとして時々名を見る。ラノアの不在が残念だが、彼はひと足早く名を上げていて、ブライアン・イーノとの蜜月関係が始まった頃。U2『THE UNFORGETTABLE FIRE(焔)』やピーター・ゲイブリエルのサントラ盤『BIRDY』がこの時期の作品だ。

そして今回の2枚組デラックス・エディション。disc1には、オリジナル盤『BARGING IN』をリマスター収録。ハイ上がりで広がりのあるラジオ乗りの良いサウンドは、まさしくメロディック・ロックの王道と言える。そこにエッジの効いたエモーショナルなギターが斬り込んでくる。ただしヴォーカルはそれなり。でもその分、演奏とヴォーカル、楽曲そのもののバランスがよくて聴きやすい。ビッグ・ネームに比べりゃ小粒だけど、マニアな方はむしろ、そこに親近感や愛着を持つかも。リード曲〈Can't Hold On Forever〉、泣きのバラード〈(You've Gotta) Work For Me〉、ブルージーなシャッフル〈Take A Part Of Me〉、ライト・タッチの〈One Less Marianne〉などには、そうしたバーニーの特徴がよく表れている。結果、大きなヒットには恵まれなかったが、カナディアン・グラミーとされるジュノー賞に於いて、年間最優秀新人男性ヴォーカルにノミネート。この年のウィナーは、最優秀男性シンガーにブライアン・アダムス、最優秀グループがラヴァーボーイ、新人グループがラノワが手掛けたパラシュート・クラブだから、時代の空気が分かろうというものだ。

一方のdisc2には、今回初出となるデモ音源、シングル曲やアルバム楽曲のリミックスなど、計14曲の未発表orレア・トラックを収録。中にはアルバムに入れても良かったんじゃ…?、と思う楽曲もある。でもアルバムが好評なのに、プロモーション・ツアーさえやらなかったそうだから、メジャー・キャリアが続かなかったのは仕方がない。本作後のバーニーは、セッション仕事やスタジオ・ワークに戻って数多くのバンドに参加。ブラッド・スウェット&ティアーズの看板シンガー:デヴィッド・クレイトン・トーマスのサポートでも活躍した。そして現在も気ままな活動を続けているそうである。

bernie labarge《Tower Records で国内仕様盤》

《Tower Records で Import 盤》

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