kaita

ちょうど10年前の2016年2月に亡くなったアース・ウインド&ファイアーの総帥モーリス・ホワイトが、生前、日本のネオ・ソウル・バンドをプロデュースしていたことはご存知だろうか。95年にメジャー・デビューし、99年に活動休止。正味3〜4年の活動期間に、アルバム3枚とシングル7枚を発表した実力派の6人組、KAITAがそれである。そのアルバム3枚のうち、最初の2作がモーリス・ホワイトの制作。今回、そんなKAITAのデビュー・アルバムにシングル曲など4曲を追加し、【マスターピース・コレクション〜シティポップ名作選】として復刻が決定。筆者がライナーを書かせて頂いた。

KAITAの大きなセールス・ポイントは、曲作りとヴォーカルを一手に担うフロントマン:能勢海太の存在。元々このバンドは “PUNCH KICKS” と名乗っていたそうだが、デビューに際して能勢を強力プッシュしていく意図からKAITAに改名した。百花繚乱の90年代J-POPシーンにあって、95年頃というのは久保田利伸やオリジナル・ラブ、U-Aらが人気を博し、J-R&Bブームが疾走し始めた時期。スガシカオやMISIAのデビューが97〜8年だから、まさにひと足先を行っていたワケだ。ヴォーカル・スタイル的には久保田やリジナル・ラヴ:田島貴男を髣髴させるところがあるが、もっと柔軟なニュアンスがあり、バンドの演奏力も充分。グループ解散後はセッション・シーンに身をを投じた者もいるほどだ。

そしてもうひとつのポイントが、いうまでもなくモーリスが手掛けた、というところ。これは日本の新人バンドとして初めてのことで、異例中の異例。既に人気のピークを過ぎていたとは言え、EW&Fおよびモーリスの知名度は絶大で、当時はモーリスに吊られてKAITAを知った方が少なくないはずだ。一方でモーリスは、寄る年波の影響か、EW&Fのツアーから離れようとしていた時期(後に健康問題があったことが判明)。代わりにプロデュースなどスタジオ・ワークに力を入れ、エル・デバージ、ジェームス・イングラム、ラムゼイ・ルイスらを立て続けに手掛けている。そうした流れで、KAITAをプロデュースすることになったのだろう。

そうなると、つい、モーリス界隈の有名セッション・ミュージシャンの参加を期待してしまうが、左にあらず。参謀役ビル・メイヤーズがコ・プロデュース、アレンジ、キーボードでクレジットされている程度だ。ホーン・セクションは加えたが、あくまでKAITA自身のバンド・サウンドを生かす、そういうシェイプ・アップしたプロデュースぶり。おそらくKAITA側もそれが心地良かったのだろう、2作目『夜明けのプラザスイート』も同じフォーマットで作られている。

リード曲<メロディ>は、当時のFMでヘヴィローテーション。モーリスとビルが提供し、能勢が歌詞を書いた<LOOKING FOR LOVE>は、当然のことEW&Fに通じるホーン入りポップ・ファンク。<二十歳のソウル>や<月の夜でもレゲエっぽく>では豊潤な音楽素養を窺わせ、<いい感じ>では少し抑えたグルーヴでタイトル通りの雰囲気を届ける。

全盛期EW&Fのダンス・クラシック的ナンバーを期待すると大きく外すコトになるけれど、彼らと入れ替わるようにSuchmosやNulbarichが台頭してくるのを考えると、ちょっと早すぎたグループだという思いが強くなる。シティポップのブームも落ち着いてきた今、こうした本物のバンドこそ再評価されるべきだろう。発売日は来週25日デス!