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山下達郎『CIRCUS TOWN 〜50th Anniversary Edition』到着。2026年の最新リマスターに加え、02年盤のボーナス2曲が6曲へと拡大。とはいえ5曲がカラオケなので、実際はあまり意味のない増量なのだが、ココに1曲『SPACY』で完成を見る<言えなかった言葉を>のお蔵入りニューヨーク・ヴァージョンが収められたのがミソ。ご本人解説によれば、キーの設定を高くしすぎて歌が苦しくなってしまい、演奏は良かったのに泣く泣くボツにしたトラック、なのだとか。02年の時にはオリジナル・マスターが発見できず、CDには未収。アナログ盤のボーナス・ディスクにのみ、カセット・コピーから収録していた。

今となっては、達郎カタログの中では聴く機会が減ってしまった作品。しかしソロ・デビュー作として重要なポジションにあるコト、シュガー・ベイブ『SONGS』と共に、“タツローはココから始まった” というべきアルバムなのは疑いない。ライヴ定番で、かのエヂ・モッタも日本公演で披露した<Windy Lady>、アンコールでのサービス・トラック<Last Step>を筆頭に、タイトル曲<Circus Town>、ジョン・ホッブスのエレピ・ソロが素晴らしい<迷い込んだ街と>なんかも大好きだし。ニューヨーク・サイドのアレンジ&プロデュースを手掛けたチャールズ・カレロのスコアは、この後の氏のアレンジの教科書になったことで知られる。そういう意味で、タツロー好きを自認する方々は、持ってなアカン一枚。

またL.A.セッションで急遽招集され、「無名だけどうまかった」と紹介されているギターのビリー・ウォーカーは、のちにビーチ・ボーイズやグレン・キャンベルらと共演し、ナッシュヴィルのセッション・ミュージシャンとして活躍する人。氏とセンスが合うのは当然で、AOR方面ではジョン・ホッブスと共にジョー・シャーメイ・バンドのメンバーになった。

ただね〜、26年リマスター盤が必要かどうか…。物理的に音が良くなっているのは間違いないけれど、聴く側のリスニング環境や耳の鍛え方を考えたら、果たしてどうなんでしょ? リスナーによって意見が割れるかな? 自分だって、前回盤との決定的な差なんて聴き分けられない。10年ごとにアルバムを出し直し、ファンもそれを素直に有り難がっちゃうパターンもあるけれど、やっぱり売る側の一方的なロジックに踊らされてしまっているような…。ま、気に入らなきゃ買わなければイイだけの話だけど、そこにはファンの悲しい性もあって、「アァ、ゲットしなきゃ!」という強迫観念が働く。売り手はそこに付け込んでくるのだな。かくしてタツロー・ファンは、このアルバムを手始めに、これからしばらく毎年のように50周年盤を買わされ続け、売り手は超安定したリセール・ツールを獲得することになる。

でも、もし尖っていた頃の氏なら、こういう営業めいた活動に対しては、提案されても同意しなかったかもしれない。でも最近は、ビジネスやセールス面に関してはスタッフ任せ、みたいな大らかさがあって…。つい先日のツアーのゲネプロ公開、ファン・クラブ限定ならまだしも、シッカリ一般向けに相応の価格で販売すると知って、正直、少々残念な気持ちになった(かなり…かなぁ)。“業界のご意見番”だった氏も、今やココまで…、なんて。もちろん、それを覗き見してみたい気持ちは、ファンなら当然持っている。でもプロ中のプロとして、誰よりも強い矜持を持っていた御仁だ。物わかりが良くなったというべきなのか、何なのか…? これはもう、ず〜っと拒否し続けている全作サブスク公開も、案外近かったりして…

そういや、今回の『CIRCUS TOWN〜50th Anniversary Edition』復刻に際して、タツロー君登場のティーザー映像と、タイトル曲<Circus Town>の動画も公開されている。どちらも現状はコレしかないだろな、的な内容。でも達郎カタログ作品では初めてのコトだし、海外でも普通に見られるのだから、コレは良いこと。皆さんもまずはチェックを。






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ソニー・ミュージックレーベルズ
2026-04-08

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