barry manilow_what a time

名盤誕生。バリー・マニロウ、オリジナル楽曲で構成したスタジオ・アルバムとしては、実に15年ぶりとなるニュー・アルバム『WHAT A TIME』が素晴らしい。昨年末に肺ガンを公表。幸い早期発見で、切除手術のため今年1月に予定されていたフェアウェル・ツアーは延期されたが、命に関わるような問題ではないようで。それでも何か思うところがあったのか、はたまたそれ以前からレコーディングを進めていたのか、こうして新作が届けられた。

アルバムは定期的に出ていたものの、企画作だのカヴァーものだのばかりで、最後のオリジナル作は11年の『15 MINUTES』、更にその前のオリジナルとなると、何と01年の『HERE AT THE MAYFLOWER』まで遡るコトになる。でもぶっちゃけ、どちらもあんまし面白いアルバムではなかった…。カヴァー物では、そこそこ気に入ったアルバムはあったけれど、繰り返し聴いたのは『SUMMER OF '78』が最後かな? でもアレだってAORカヴァー作だったから、オリジナル作のお気に入りとなると、89年作『BARRY MANILLOW』になる。調べてみて、ちょっとビックリ。

でも、その89年作を共同プロデュースしていたのがマイケル・ロイドで。それ以来のパートナーであるロイドが今作もプロデュースを担当。先行シングル<Once Before I Go>はピーター・アレンの83年作『NOT THE BOY NEXT DOOR』からのカヴァーで、この曲はベイビーフェイスのプロデュース。それ以外はまさにマイケル・ロイドと二人三脚で制作したみたいで、ゲストにデイヴ・コズ(sax)、デュエットしているシャロン・マフィー・ヘンドリックス、そしてCDボーナス曲の<Reunited>(ピーチェス&ハーブ)のカヴァーをメラニー・テイラーと。

そういう意味では、華やかさを欠くアルバムで、話題性には乏しい。ところがドッコイ、収録曲がことごとく名曲揃いで。しかもその多くがバリー自身の作曲で、ジョン・ベティスやブルース・サスマン、エイドリアン・アンダーソンなど、付き合いの長いソングライティング・パートナーが詞を提供している。バラードやスロウ系のナンバーが多い中、数少ないポップ・チューン<Sun Shine>はゲイリー・バーロウの楽曲で、詞はバリーとの共作。コレ、かなりの名曲よ。

正直なところ、寄る年波の影響か、闘病の影響か、歌唱力は落ちている。声が細くなった感じがするし、ノビもなくなってきた。若干ピッチがふらつきそうになったり、ちょっと枯れてて痛々しい曲もある。イマドキ、修正しようと思えばいくらでも直せたはずだが、それをしないで歌い切っている所はバリーのプライドなのだろう。少しぐらい声がカスレたって、音程がヨレたって、それも含めての表現力。むしろ返って情感がヒシヒシと伝わるし、気持ちの高ぶりがダイレクトに感じられる。こういう歌って、若い時には歌えないモノよ。

そういや録音も、ちょっとヴィンテージな音作りで。マイケル・ロイドが多くの楽器を重ねて、レコーディングもミックスも担当したトラックが多いから、彼の器材やセンスが古いのかもしれない。が、それも含めて、敢えてコレなんだと思う。

バリーはきっと、コレが最後のアルバムだなんて思ってない。もう83歳だから、心の何処かでそういう覚悟はしているだろうけど。でもこの先、いつまでイイ歌が歌えるかどうか、それは分からない。だから、いま歌いたい歌、歌える歌を瞬間パッケージの如くココに封じ込めた、というコトなんだろうな。

もう一回、書きます。名盤誕生。







《amazon》
What A Time (輸入盤)
Barry Manilow
STILETTO Entertainment
2026-06-05

《Tower Records はココから》

《amazon》
What A Time (輸入盤) [Analog]
Barry Manilow
STILETTO Entertainment
2026-06-05

《Tower Records はココから》