keiko kimura lp

引き続き、定例レコード・イベント【CITY POP on VINYL 2026】でのリイシュー・アイテムから、筆者解説の木村恵子『STYLE』をご紹介。横浜生まれ、フィラデルフィア育ちの帰国子女で、慶應義塾大学在学中は杉真理や竹内まりやを輩出した有名音楽サークル:リアル・マッコイズに在籍。この88年作でデビューしている。当時の日本のポップス・シーンはまさに打ち込み全盛で、ド派手なプログラミング・サウンドが幅を利かせていた時代。その反動か、翌年“イカ天”がスタートし、バンド・ブームが到来するのだが、その間隙を突いて登場したのが彼女だった。

サウンド・プロデュースは鈴木茂。その都会的センスが、歌はあまり技巧的ではないものの、クールでアンニュイな雰囲気で爽やかな色香を放つ木村をオトナっぽく演出している。作詞に盟友:松本隆を引き込み、演奏陣には今剛(g)、倉田信雄・富樫春生・中西康晴・難波正治・国吉良一・永田一郎(Kyd)、岡沢章・美久月千春・小原礼・長岡道夫(b)、島村英二・山木秀夫(ds)、吉川忠英(finger-g)、浜口茂外也(perc)等などと、かなり豪華。しかも曲によっては鈴木自身がベースまで弾き、趣向を凝らしたコーラス・アレンジを行なっている。相当に入れ込んでいたのは間違いないだろう。

スターターは、クルマのクラクションに導かれるメロウ・ミディアム〈Good Morning〉。これにフェイク・ボサ〈泉に誘って〉と、いきなりウェットなナンバーが続く確信犯的フォーメーション。リード・シングル〈コルトレーンで愛して〉も、この流れを先取りしたものだ。更に松本=鈴木のペンによるファンキーAOR〈電話しないで〉、杉が提供した〈シンジラレネーション〉、加藤和彦・安井かずみ夫妻がYUKI(岡崎友紀)に書き下ろしたシティ・ポップ名曲〈Do You Remember Me〉のカヴァーと展開する。〈シャレード’88〉は、元祖アンニュイ系のお姐様シンガー:門あさ美の提供。木村自身は、松本の作詞に頼った〈黒いマニキュア〉、ジョン・レノン追悼ソング〈Good-bye Eggman〉を書き下ろした。

当時は決してヒットしたワケではないものの、それなりのファン・ベースを獲得。90年までに『AMBIVA』『cafe 1984』『M』の4作品を矢継ぎ早にリリースし、その後はギタリスト窪田晴男とボサノヴァ・ユニット:ケルカン(Quelqu'un)の結成に向かう。『AMBIVA』も一定評価があり、ケルカンは彼女自身の持ち味にフィットしていたが、やっぱりこのデビュー作の爽やかなインパクトは忘れがたいなァ…。

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