ロッド本

和久井光司さん責任編集『ロッド・スチュワート完全版』が届いた。常に主流派とは違った部分を暴き出す氏のオルタナティヴな視点は、時に過激になりながらも、いつも興味深く勉強になる。今回もロッドにかこつけて、直接的には関係のないスモール・フェイセズやハンブル・パイまで追求し、「あれッ、コレってスティーヴ・マリオットの本だっけ?」なんて瞬間も。先ごろ世を去った山内テツまで特集しているのは、快哉を叫ぶしかない。テツ参加前のフリーにまでがっつりページを割いているのは、ちょっとビックリしたけど。でもロッド本人のディスコグラフィーなんて散々語られているから、前史や周辺を固めて主人公を浮き彫りにしていく手法は、和久井さんならではだろう。

マリオットだけではない。フェイセズを掘っていく下りでは、ロニー・レイン経由でギャラガー&ライル、サザーランド・ブラザーズやクイーヴァーまで突き進んでいく。そうしてスコットランドの香りをまぶして、ロッドを多面的に考察していくのだ。

ロッドのキャリアでは、いにしえのロック・ファンには軽視される80年代も、当然ながらシッカリとフォロー。確かに80年代前半のロッドは、少々売れセンに走りすぎていたと思うが、80年代後半はボブ・エズリンやバーナード・エドワーズをプロデュースに起用し、徐々にシンプルなサウンドへ回帰してペースを取り戻していった。急遽決まった『UNPLUGGED』のリリースで、トレヴァー・ホーンと組んだ会心作『ONCE IN A BLUE MOON』(92年録音)がお蔵入りしたのが残念だけど(09年に通販のみでリリース)、『GREAT AMERICAN SONGBOOK』シリーズが動き出すまでのロッドは、今一度再定義すべきと思っている。

自分史的に振り返ってみれば、初めて自分が買ったロッドのアルバムは、新譜として出たばかりの『SMILER』(74年)だった。あまり話題にならない一枚だけど、当時の入門者には分かりやすいアルバム。タータン・チェックのジャケットも、“アトランティック・クロッシング”する前のケジメの作として、ロッドの祖国への愛着を示す。代表作とは言えない佳作レヴェルの内容だけど、これを知っていたから、『ATLANTIC CROSSING』以後のロック・スターとしてのロッドしか知らないファンとは少しばかり見方が違うのだ。そういえば当時の『SMILER』は、リリースが遅い日本盤までの時間差を埋めようと、最初は輸入盤に帯とコメントをつけて、当時のフォノグラムが国内盤扱いで販売していた。今でいう直輸入盤国内仕様のハシリだったか。そういえば今回は、執筆陣の一人に頼まれて、ちょっとした資料を提供したんだったな。

バタバタで全然読み込めてないれど、後からチョッとした掲載漏れが発覚したそうで…。締切に追われて本を作っていると、そういう見落としというか、監修者もスタッフも気づかなないようなエア・ポケットが発生することがある。自分もライター・キャリア始まって以来、初めて立て続けに2冊のディスクガイドを発刊し、今まさに2冊目の発売日を待っているところ。これはもぅ他人事ではないよなぁ…

ついでに、山内テツのキャニオン時代のソロ作『ききょう』や、森園勝敏・桑名晴子らを従えたTETSU & THE GOOD TIMES ROLL BANDの76年ライヴが、この本の発売に合わせたようにサブスク解禁。特にライヴ盤は小型フェイセズみたいで、めちゃカッコ良いのよ。

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ロッド・スチュワート完全版
河出書房新社
2026-09-07

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